中学生・高校生のお子さんが不登校・引きこもりになったら……【まずは親子の会話量を増やそう】
本記事では、不登校・引きこもりの中学生・高校生のお子さんにとって「ご家庭を絶対安心の場」にする意義と、「ご家庭を絶対安心の場」にするための方法について説明します。
……子どもと会話をしようと心がけているんですけど……なんて、言葉をかければいいのか……
……子どもとしゃべっていると、つい説教になってしまって……
……子どもと1週間喋れていないんです……
こんな保護者さまからの声を聞くのもビーンズではあるあるです。特に進路決めと絡む時期になると保護者さまの不安もグッとあがってきます。
今回は、中高生のお子さんを持つ保護者さまと毎月100件以上のやりとりをしている学習支援塾ビーンズ塾長の長澤がお送りします。
長澤啓(Nagasawa kei)
学年ビリから二浪し東京大学へ入学。ビーンズの活動が楽しすぎ、留年。経済学部経営学科卒。
ビーンズが積み上げてきたノウハウを「ビーンズメソッド」として文字化し、より洗練するのがメインのお仕事。さらに、親との衝突が絶えなかった自身の経験を活かし、保護者とのコミュニケーションにも注力。保護者さまと月100件以上やりとりをしながら、ビーンズ流の保護者さまサポートを拡充中。最近は副代表として、講師の採用育成プランの策定・外部協力者との渉外・経営企画までマルチにこなす。趣味はビールを飲みながら出汁巻き卵をつくること。
■インタビュー/詳しい自己紹介
学校の勉強についていけなかった僕が東大に合格するまでと親と対立した日々について
もくじ
【中学生・高校生のお子さんが不登校・引きこもりになったら……】まずは親子の会話量を増やそう
不登校や引きこもり状態になってしまった中学生・高校生のお子さんとのコミュニケーション、こんなことにお悩みではありませんか?
「中学生・高校生の子どもが学校へ行かない。そのことについて話しだそうとしても全く言うことを聞いてくれない……」
「進路についてどう考えているのか子どもに聞いても、自分の部屋に駆けこんでしまい話にならない……」
「このままだと、子どもはこれからどう生きていくのか……」
結論から申し上げます。
中学生・高校生のお子さんと家庭で会話量を増やすためには、 お子さんにとって「ご家庭を絶対安心の場」にすることを目指してください。
そのための初手として「不登校・引きこもりのお子さんと保護者さまの会話量を増やす」 をしていただきたいのです。
ご家庭を「絶対安心の場」にする意義について
お子さんに不登校・引きこもりの状態を脱して欲しい!
進路や復学について考えて欲しい!
その時、お子さんにとってご家庭を絶対安心の場 にする意義とは何か。
まず、不登校や引きこもりになったお子さんの進路・復学に対するヤル気・チャレンジ精神は「落ち着ける場所・逃げ込める場所」がないと生まれません。
そして、ご家庭は、お子さんにとっての「落ち着ける場所・逃げ込める場所」である必要があります。
不登校・引きこもりのお子さんは、
「何かに失敗したとしても、家に逃げ込むことができるから大丈夫」
「何かに疲れても、家で休むことができるから大丈夫」
という確信を持てて初めて、ご家庭の外でチャレンジ・努力ができるのです。
ビーンズで授業しているお子さんでも、ご家庭が絶対安心の場になっているお子さんは状況改善が早いです。
そして、進路選びや受験といったお子さんにとってのストレスへむけて、チャレンジ・努力ができるようになっていきます。
不登校・引きこもりのお子さんにとってご家庭を絶対安心の場にするために必要になってくるのが……
保護者さまとお子さんの会話量を増やすことです。
「他人事」「遠い将来」で会話しよう
お子さんとの会話量の増やし方にもコツがあります。
「学校に戻る気になった?」
「来週までの提出物準備できてる?」
「志望校決めた?」
などの、不登校・引きこもりのお子さんにとって「自分事」かつ「近い将来」についてお話しすることはやめましょう。
代わりに、 不登校・引きこもりのお子さんにとっての「他人事」かつ「遠い将来」を話しましょう。
例えば、
「(ニュース番組を見ながら)なんであんな事件が起きてしまうんだろうねー」
「来年○○に旅行に行きたいんだけど、どの観光スポットを巡ろうかなー」
「仕事で抱えてたプロジェクトが成功してさ、打ち上げで飲んだビール美味しかったなー」
「最近○○ってゲームが流行っているって広告で見たけど本当なのかなー」
といった感じです。
「他人事」「遠い将来」についての話題だと、不登校・引きこもりのお子さんもストレスなくお話しすることができます。
難しく考えることはありません。
要は、お子さんと「他人事」「遠い将来」を意識した「雑談」をすればいいのです。
《保護者さまとお子さんの会話量を増やす話題例》
・暗すぎないニュース
・保護者さまの仕事で嬉しかったエピソード
・保護者さまと、お子さんとの共通の趣味の話
・保護者さま自身の(重すぎない)お悩み相談
「他人事」「遠い将来」で不登校・引きこもりのお子さんとお話しする方法について詳しく知りたい方はこちらの記事もご覧ください!
こちらの記事もおすすめです!(「ソクラテスのたまご」さんからのインタビュ-記事です)
保護者さまの「独り言」から始めよう
さらに、最初は
「あえて会話のキャッチボールをしようとしない」
ことも大事です。
思春期のお子さんは、保護者さまから質問されると、
「親は自分が何か悪いことをしているのではないかと疑っているのでは……」
「自分がサボっているのではと疑っているのでは……!」
「自分の時間に干渉してきた気がしてムカつく……!」
と感じてしまいがちです。
まずは、「独り言」のつもりで、ぶつぶつと「他人事」「遠い将来」の話をつぶやきましょう。
お子さんが、
「それってどういうこと?」
「何それおもしろい!」
「じゃあ、○○すればいいじゃん」
といった感じで保護者さまの独り言にのってきたら、その話題について深ぼりましょう。
もし、お子さんから反応がなくても大丈夫です!
保護者さまの話を聞いていないフリをして聞いている場合も多いので安心してください!
まずは、1日1回以上、他愛もない“雑談”をすることを目指しましょう!
《会話が盛り上がったときの注意点》
お子さんが食いついてきた話題が何かの学問分野や職業と密接に結びついていると、とても嬉しいですよね。
ですが、そんな時こそ注意が必要です……!
急にギアを上げて「あなたが、話している〇〇って、××大学だと勉強できるわよ! あなた、そういうことに興味あるの!?」と話し始めてはいけません。
それまで楽しくお話ししていたのに、急に自分事として考えないといけないシリアスな空気を出されるとイヤですよね……
仕事の飲み会で「仕事内容をネタに飲んでいる時に、急にPCを取り出して、真剣な話をしてきた……」ぐらい空気を冷めさせるのでご注意くださいね(笑)
親子の会話でしてはいけないこと
中学生・高校生の子どもとの会話で、絶対にやってはいけないことは、子どもの話(提案、夢、たわいもない話などなど)を頭ごなしに否定することです。
どんな話題でも、頭ごなしに否定すると思春期の子どもは傷つき、その経験が積み重なると「お母さん・お父さんはどうせ自分の話を聞いてくれない」という思いが強くなります。
ここで大事なのは、頭ごなしに否定してはいけないのはどんな話題でも関係ないということです。
保護者と全く話をしない状態になっている中学生・高校生に「“親はいつも自分の話を聞いてくれない”……ってことだけど、今まで、どんな話を親に聞いてもらえなかったの?」と聞くと、
「確かに、その話題を頭ごなし否定されたら、傷つくよな……」って場合もあるにはあるのですが、それは実は少数派です。
大抵は本当にたわいもない話題(ファミレスでのメニュー選び とか……)を頭ごなしに否定されたというエピソードがワーッと子どもから出てくるんですね。
たわいものない話題でも、頭ごなしに否定された経験が積み重なると「私の意見は聞いてもらえない」「いつも頭ごなしに否定される」という記憶が子どもの中にこびりついてしまいます。
その結果「親と話しても絶対に聞き入れてもらえない。ゆえに親と話しても意味がない!」と子どもが思い込み、親子が没交渉になってしまった場合が多いのです。
この状態のなにがマズいかというと、将来、子どもが大事なことを決める際、親に相談することがなくなってしまうことです。
「一言、親にいってくれたら、もっと楽に解決できたのに……」
「こんな大事なことを、親と相談せずに決めてしまうなんて……」
なんてことが起こってしまいます。
なお「大事なことって……? 」と思われる方へイメージを伝えると、小さい事案であれば(子どもにとっては)高額な買い物、大きなことだと進路のことや、もっと大事なことまであり得ます。
ファミレスのメニュー選び……などといったたわいもない事柄であったとしても、頭ごなしに子どもの話を否定してしまうことで、子どもと没交渉になってしまい、「早く言ってよ!」「一言相談してよ!」と親が叫びたくなるような大事な事柄であっても、子どもが親へ話してくれなくなってしまうのです……
とはいえ「子どもはファミレスで一番高いメニューを毎回頼んできます!それを聞けっていうんですか!」という保護者さまの気持ちもよくわかります。
ではどうするか。
中学生・高校生のお子さんが何か(親から見て)無理な要求をしてきたときは「子どもの要求をいったん最後まで聞いたうえで、その要求を断る」です。
子どもの要求を断るコツはたったこれだけです。
もう一つ例を出します。
子どもの要求の中でもやっかいなのが進路・進学などに絡むもの。
例えば、子どもが急に「おれ、もう学校行かないぜ」とか言い出して、「俺、YouTuberになるから。機材準備してよ」などと言われると、度肝を抜かれますよね。
「子どもが(親から見て)常識的には考えられない将来や進路を考えているんです!」
「こんな将来や進路をどう聞けっていうんですか!」という保護者さまのお気持ち、分かります。
お子さんのことを思えばこそ「そんな地に足のついていない将来や進路、すぐ否定しなきゃ」と思いますよね。
ただ、思い出してほしいのは、「子どもの頭ごなしに否定する」⇒「親子が没交渉になる」⇒「後ですごくマズいことになる」の方程式です。
では、どうするか。
お子さんが、どんなに地に足のついていない夢のような将来や進路をしゃべってきたとしても、最後まで聞く。コレだけです。
この時、聞いている間は、できたらニコニコしててほしいのです。
お子さんの話の内容を肯定しなくてもOKです。ただ「ほー」とか「ほぇー」とか言って、ニコニコしながら聞いてほしいのです。
子どもが話した将来や進路へのクリティカルなコメントも、子どもから「どう思う?」と求められるまではやめておきましょう。
子どもの話を最後まで聞いたからと言って、その内容に賛成するとか、ましてや応援する必要はありません。そこは話を聞き終わった後、是々非々で、親として応援できること・できないことを伝えましょう。
具体的なディスカッションや交渉は、子どもの話を全部聞いたあとにする。これを意識するだけでもかなり状況は変わります。
不登校・引きこもりのお子さんの言いなりにはならない
不登校・引きこもりのお子さんにとってご家庭を絶対安心の場にするとは、お子さんを「甘やかす」ことではありません。
「ご家庭を絶対安心の場にする」とは、不登校・引きこもりのお子さんと保護者さまの信頼関係を強固にすることです。
甘やかし過ぎると、不登校・引きこもりのお子さんに
「うちの親は、子どもに頼まれたことは何でもやるくらい弱い存在だ」
という誤ったイメージを持たれてしまいます。これだと、親子の信頼関係はかえって弱まりますよね。
「お子さんからの筋が通っていない要求」は無視してOKです。
筋が通っていない要求は、要求内容をいったん全部聞いたうえで、以下のように対応しましょう。
・「外に出るの嫌だからお菓子(ジュース)買ってきて」
⇒自分で行かせる
・ごはんの時間になっても「後で食べる」と言って食卓に出てこない
⇒じゃあ、あんたの分は今日はナシ! と、サバサバと伝える
・ゲームやスマホを無制限にやらせてしまう
⇒きちんと親子でルールを設けて、違反したら没収する
お子さんの機嫌が悪くなったとしても、素知らぬ顔でいましょう。
一方で、引き続き「他人事」「遠い将来」の話題で会話を試みましょう。
最初は無視してくるかもしれませんが、いずれ保護者さまの毅然とした対応方針に納得して、元通り接してくれるはずです。
要求は聞くし、頭ごなしな否定はしないが、筋の通っていない要求については「ダメなものはダメ」と伝える姿勢を貫く。
同時に、子どもの進路や復学など将来の選択は長い目で見守る。
まずは「不登校・引きこもりのお子さんとのご家庭での会話量を増やす」ことを優先する。
この態度でお願いできればなと思います。
《万一、お願いを無視するとお子さんが家庭内暴力を起こす場合》
保護者さまの身の安全を第一に考えましょう。
周りに保護者さまを守ってくれる人がいない場合は、身を守るために筋の通っていないお願いでも聞いてあげるべきかもしれません。
一方で、しかるべき専門機関に頼り、状況改善を目指しましょう。
不登校・引きこもりのお子さんが復学や進路について前向きに考え出したら……
保護者さまとお子さんの会話量が増えれば、
お子さんと保護者さまの信頼関係がより強くなり、
お子さんの中に「家庭は絶対安心な場」だという思いも生まれます。
そうすると……
「失敗したとしても自分には逃げ込める場所(ご家庭・保護者さまとの関係)がある」
⇓
「だから、(失敗を恐れず)復学や進路選択に向けてチャレンジしてみよう
という気持ちが生まれます。
復学や進路選択という「自分事」「近い将来」を考え始めることは、不登校・引きこもりのお子さんにとってストレスに感じることが多いです。
お子さんが一人で復学や進路選択といった「自分事」「近い将来」について考えるのが大変そうな場合、
ビーンズのような第三者に頼るのもありです。
また、保護者さまがお子さんと伴走し、一緒に考えていくのもよいと思います。
※お子さんと一緒に進路を調べる際は、以下のブログも参考になさってくださいね。
さて、不登校・引きこもりのお子さんが前向きに復学や進路について考え始めると、保護者さまは
「やっとここまで来た……!」
と思う反面、 でも、何かで失敗して前みたいな無気力状態に戻ってしまわないか……」
と心配になるかと思います。
ご安心ください。
お子さんがご家庭を“落ち着ける場所・逃げ込める場所”、「絶対安心の場」 と認識した場合……
例え失敗して、短期的には落ち込んだとしても、 必ず保護者さまに泣きついてきてくれます。
そして、泣きついてくれさえすれば、また必ず前に向かって動き出してくれます。
保護者さまに泣きつくなかで、お子さんの中に、
「自分にはいざとなれば逃げ込める場所があるんだ…… 」
「失敗したとしてもお母さん・お父さんはしっかり自分の味方だ……だからもう一度チャレンジしよう!」
という気持ちが芽生えてきます。
ですから、不登校・引きこもりのお子さんが前向きに復学・進路について考えだしたときこそ「失敗したとしても泣きついてくれる関係」づくり
を目指しましょう。
そのために、長く優しくお子さんを見守ってあげてほしいのです。
まとめ 不登校・引きこもりのお子さんの状況改善の最初は、親子の会話量を増やすこと
「不登校・引きこもりの子どもと最近会話してないな……」
という場合は、まずはお子さんとの会話量を増やしてほしいのです。
親子の会話の糸口は「他人事」「遠い将来」についての雑談がキーワード。
とはいえ、保護者さまだけで不登校・引きこもりのお子さんの状況を改善することが難しい場合もあります。
そのような保護者さまは、ビーンズの”無料相談”を是非ご利用ください。
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